手を繋いで、君と前を向く。

自分の気持ちに気が付いたはいいものの、その次の日から抗がん剤治療が始まったわたし。

しかしその薬が思っていたよりも身体を攻撃しているのか、副作用が強い。


「っ……」


終始絶え間なく襲ってくる吐き気。何をしていてもつらくて、何もしていなくてもつらい。

横になっていようが起き上がっていようが、しんどくてもうこんな治療自体やめてしまいたくなる。

髪の毛は切ったけれどやはり抜けてしまい、今はニット帽をかぶっていた。

楽しみにしていた週に一度の九条くんとの時間だけど、こんな姿で会えるわけもなく。


「雪菜ちゃん、那智くん来てくれたけど……どうする?」

「ごめんなさい、今日もちょっと……っっ」

「そう。わかった。伝えておくね」


看護師さんに面会NGを伝えると、布団に潜り込んで涙を流した。

会いたい。だけど、こんなんじゃ会えない。

好きな人の前で吐いている姿なんて見せたくないし、髪の毛も無いニット帽姿も見られたくない。

ただの友達相手なら、大丈夫だったかもしれない。

無理矢理笑って気持ちをごまかすこともできたかもしれない。

だけど、九条くんが相手ならそれは無理だ。

だって、好きな人だもん。好きな人にこんな姿見られるなんて、絶対無理。

部屋の外で九条くんと看護師さんが話している声が聞こえてきて、


「九条くん……ごめんね……」


思わず声が漏れる。