手を繋いで、君と前を向く。

「え……?」

「ククッ……あぁー!マジで意味わかんねーっ」


……笑って、る……?


口元を手で抑えながら小さく笑うその姿に、わたしはぽかんと見つめてしまった。

さっきまで鋭いと思っていた目はふにゃりと垂れ下がっていて、薄い唇から見える八重歯が可愛いと思った。


「……やっぱりかっこいい……」


そうつぶやいた瞬間、心臓がドクドクと高鳴っていく。

な、に?これ。

何かに撃ち抜かれたように、心臓が痛い。

今まで聞いたことないくらい早く動いてるし、なんかうるさい。

みるみるうちに再び真っ赤に染まるわたしの顔。


「ああああの!これ!予備です!じゃあわたしは!これで!さよなら!」


いまだに小さく笑っている九条くん。

その笑顔をこれ以上見ていたらわたしがおかしくなってしまいそう。


「あ、おい!」


予備の絆創膏を押し付けるように渡して、急いでその場から立ち上がり逃げるように走る。

今度は家に入ると自分の部屋に駆け込み、ベッドの布団の中に潜り込む。

まだわたしの心臓はおさまる気配が無くて、しばらく枕の下に顔を埋めて意味も無くジタバタする。

そのまま、気が付けば眠ってしまっていたのだった。