手を繋いで、君と前を向く。


九条 那智と言えば、わたし、潮路 雪菜(シオジ ユキナ)が通う中学で一番の不良だと言われている男の子だ。

学年は同じだけど、クラスが離れているのと九条くんはあまり真面目に授業を受けていないらしく、その姿を見たことがなかった。


「……九条くん、で合ってますか?」

「あぁ」

「あ、わたしは潮路 雪菜です。同じ三年です」

「ふーん」


聞いてきた割には興味がなさそうに頷く九条くん。

わたしはそれを見ながら九条くんの噂を思い出した。

それは大小さまざまで、でもそのどれもが悪いものだ。

私立の中学からの転校生で、初日から金髪に近い明るい茶髪。

学校の先生たちに直してこいと言われても聞く耳を持たず、それどころか反抗して担任の先生を殴ったというのは有名な話。

どうやら前の私立の学校でも問題を起こして退学になっていたらしい。

学校には来ているものの授業はほとんど出ておらず、ケンカしている姿もよく目撃されているんだとか。

そんな九条くんは芸能人のように整った顔立ちをしているからか、最初はアイドルみたいにかっこいい男子がやってきた!と騒がれていた。

しかし、噂がさらに噂を呼び、気が付けば誰も近寄らなくなったらしい。

九条 那智には近付くな。関わっちゃいけない。

それは、今ではうちの学校での暗黙の了解というやつになっている。