手を繋いで、君と前を向く。

そこは個室になっていて、ベッドの上には数週間前と変わらない寝姿の母親がいた。


「……また寝てやがる」


せっかく顔を出してやってんのに、なんで毎回寝てんだよ。

そんな文句も言いたくなるものの、病人なんだから寝るのは当たり前かと思って言葉を飲み込んだ。

病院にある美容室でカットしてもらったばかりなのか、前回来た時よりも髪の毛は短く肩ら辺に切り揃えられていた。

それと比例するように頬はまた少しこけたような気がする。きっと体力も落ちているのだろう。

起こすのも悪いし。顔は一応出したわけだし。……帰るか。

そう思って身体の向きをドアの方に変えた時。


「……なっちゃん?」


久しぶりにそう呼ばれて、驚いて全身が跳ねた。


「なっちゃん、来てくれたの」

「……んだよ、寝てたんじゃねーの」

「うん、寝てた。でも物音が聞こえたから起きたの。看護師さんがね、そろそろなっちゃんが来るころだと思うからって」

「……」


看護師に俺の行動パターンがバレているということだろうか。確かに大体毎月来るタイミングは決めているからそこから予想したのだろうか。なんにしても怖い話だ。


「……つーかその呼び方いい加減やめろよ。もうガキじゃねぇんだから」

「いいじゃない。お母さんの中ではいつまでもなっちゃんはなっちゃんなんだから」


世間で言う反抗期とやらを迎えている俺にとっては、なっちゃんなんて呼ばれ方は地獄でしかない。

そもそも毎月ここに来てるだけでも褒めて欲しいものだ。