手を繋いで、君と前を向く。

「雪菜。受付したから二階行くわよ」

「あ、うん。わかった」

「どうかした?」

「ううん、なんでもない」


電子カルテのバーコードが入ったファイルを持ったお母さんに呼ばれて、わたしは九条くんが去っていった方をちらちら見ながらも小走りでお母さんの元へ向かう。

九条くんは相変わらずの明るい茶髪だけど、目立ちにくいようになのかキャップを被っていた。それもまた普段とのギャップがあってかっこいい。

……会えて、嬉しかった。

そう思ってしまう自分に驚く。

ダメだよ、関わらないって決めたんだから。

もうそんなことを考えるのもやめよう。

自分に言い聞かせてお母さんを追いかけた。


エスカレーターに乗って、二階に行って。

小児科の受付にファイルを提出して、あとは待ち合いスペースで呼ばれるのを待つだけ。

大学病院は待ち時間が長いから、イライラしている人も多い。

早くしろなんて怒鳴り声が遠くから聞こえてくることもある。

だけど、入院を経験したわたしはそんな待ち時間や暇な時間には結構慣れていて。

お母さんもわたしも、本を出して静かにそれを読み進めた。

だけど、わたしはどうしても九条くんのことを思い出してしまうからいつもより集中できない。


「……どうかした?」

「ううん、なんでもないよ」

「そう?……今日も問題無く終わるといいわね」

「……うん。そうだね」


お母さんの言葉に、わたしはドキリとしながらも笑顔を作り頷いた。