手を繋いで、君と前を向く。

「ね、聞いた?九条くん、女の子と一緒にいたって」

「え……あの九条くんが!?うっそ……彼女なのかな?」

「わかんない、でもそうなんじゃないかって言ってる人もいるみたい」


トイレから出てきたのだろう。女子二人がそんな俺の噂話をしながら歩いてくるところにばったり出くわした。

だけど二人は角を曲がり俺の姿を見つけた途端、顔を真っ青にして


「ご!ごめんなさいいいい!」


と泣き叫ぶように逃げていく。

いつもならそんなこと全く気にせずにそのまま歩き出すものの、

俺が女といた……?彼女だと……?

今日は初めて振り返り、その二人組の女を追いかけて捕まえた。


「おい」

「は、はいっ……!すみませんっ、すみませんっ」


しかし震えながら謝り続ける女たちに俺は困惑して頭を掻く。

はぁ……なんか俺がいじめてるみたいでめんどくせえな。

そう思いつつも


「……さっきの話、マジ?」


と聞いてみる。


「え……」

「さっきの噂、どこで聞いた」

「う、噂ですかっ?」

「あぁ。俺が女といたってやつ」

「わたしのクラスメイトが……友達から聞いたって……もう学校の中では知らない人はほとんどいないと思います……」

「……そうか」


つまり出所はわからないわけだ。

だけど知らないうちに、俺があいつと一緒にいたところを見られていたのだろう。

もしかしたら警察が来るからって逃げたあの時、誰かに見られていたのかもしれない。


……クソ。こうなるから嫌だったんだ。


こうなったらいろいろと面倒だから、関わるなと言ったんだ。

俺を目の敵にしているやつらは、俺の周りにいる人間なら容赦なく利用しようとするだろう。
それがたとえ女だろうが、小さな子どもだろうが。
俺を脅す材料になるものなら、なんだって使う。


だからこそ、巻き込みたくないだけなのに。

やっぱりあの時、警察に補導されたとしてもあいつの小さな手を振り解くべきだったんだ。