手を繋いで、君と前を向く。

「九条くんのお父さんね、実はもう何度もお母さんのお見舞いに行ってたんだって」

「え、でもご自宅には帰っていないんでしょ?」

「うん。だから九条くんもそれを知らなくて、つい最近お父さんと会って話して初めて知ったんだって。ちょっと怒ってたよ」


九条くんは何度もお父さんに連絡をとり、帰国すると聞きようやく会うことができた。

そこで聞かされたのが、九条くんのお父さんは実はもう何度もお見舞いに行っていたという話だった。

基本は海外で仕事しているためなかなか帰国自体できないけれど、仕事で日本に来ることが何度かありその度に必ずお見舞いに行っていたらしい。

自宅にも帰らずそれを九条くんにも知らせなかったのは、九条くんのお母さんが入院した時に冷たく九条くんを突き放してしまったことへの後悔が原因みたい。
それが九条くんが荒れたきっかけになってしまったことを悔やんで、どんな顔をして会えばいいかわからなかったからと言われたそう。


"どんな顔したらいいかなんて、普通に帰ってきてくれればいいのに……。普通に見舞い行ったって教えてくれればいいだけなのに。母さんも母さんだよ。何も言わねぇんだから"


九条くんは悔しそうにそう言っていたけれど、


"でも、初めて腹割って話せたし。やっと前に進める気がする"


どこか清々しいように笑っていたから安心した。

そして、知らぬ間に九条くんはケンカすることをやめており、学校にも真面目に通うようになっていて驚いた。


それは愛ちゃんが教えてくれて、


"九条くん、最近更生したってすごい噂になってるよ!真面目になったって。何かあったんじゃないかって騒がれてる"


電話越しにも興奮していたのがよくわかって笑ってしまった。

髪の毛も明るい茶髪に染めることはやめて、受験に向けて地毛と変わらないらしいダークブラウンに染め直した。

髪色が暗くなると印象が変わって、よりかっこよく見えるのはどうしてだろう。

会うたびに好きが増していくような気がする。