それは、五月の連休明けの帰り道のことだった。
オレンジ色に染まるきれいな空を見ながら歩いていた夕方。
急に風が強く吹いて、目に砂埃が入らないように顔を横に向けた時だった。
「……え?」
いつも通る道にある公園。そこの花壇の側にあるベンチで、誰かが座り込んでいるのが見えた。
それは、小さな子どもでもなければよくいる犬の散歩をしている大人でもない。
中学三年のわたしと同じくらいか少し上くらいの男の子がいた。
見慣れない夕焼けと似たような色に輝く髪の毛に、だらんと力が抜けたような身体。それを見て、わたしは思わず駆け寄る。
「……えっと、あの……大丈夫、ですか?」
そう声をかけたのは、ほとんど無意識に近かった。
「……あ?……」
どすのきいたような声にびくりと肩を跳ねさせながらも、もう一度
「大丈夫ですか?」
と聞く。
「んだよ、俺に構うな」
「だって……血が……」
「てめぇに関係ねぇだろ。いいからほっとけ」
面倒くさそうに吐き捨てられた言葉に戸惑うものの、光を反射してキラキラと輝いている髪の毛のすぐ下、おでこの部分からは血が流れているのがわかる。
さらに唇の横は腫れていて、青紫に色が変わってしまっていた。



