【完結】転生したら乙女ゲームのラスボスだった 〜愛する妹のためにラスボスポジション返上します〜

「リリアーナ! セシル! 聞こえたら返事をしろ!」

 俺とユリシーズは、二人の名前を呼びながら先へと進んだ。
 時折現れる小型の魔物を倒しながら、段々と濃くなる瘴気の中を、先へ――先へと。
 
 もうどれだけ走ったかわからない。どこに向かっているのかもわからない。
 だが瘴気が晴れていないということは、リリアーナは瘴気を浄化しきれていないということ。
 それだけは、確かだった。

「どこだ、リリアーナ……!」

 俺たちはひた走る。
 リリアーナとセシルの無事を祈り、ただひたすらに走り続けた。

 そして、ついに――。


「――アレク、見て! 瘴気が……!」


 ユリシーズの声に目を凝らすと、前方の瘴気がやや薄まっていることに気付く。

 ――そこは湖だった。木々の間にぽっかりと浮かぶ、灰色の湖。
 おそらく元々は青かった水が、瘴気に侵され灰色に変化したのだろう。

 その証拠に、湖の左側に白い光が見え、そこから水が徐々に青く戻っていく様子がわかる。
 白く輝く光――それはまるで子守唄のように、優しく、温かい、全てを包み込むような光だ。

「――っ」

 その色に、俺は確信した。
 間違いない、リリアーナだ。あれはリリアーナの放つ聖なる光。
 

「急ごう! ユリシーズ!」
「ああ!」

 俺たちは一層足を速める。
 そしてようやく二人の姿を視界に捕らえた。

 湖の水面に両手を当て聖魔法を発動させているリリアーナと、そんなリリアーナの背中を、水魔法で懸命に守るセシルの姿を――。



 ――だが、そのときだった。


「アレク! グレイウルフがまた……!」

 叫ぶと同時に、ユリシーズが湖の向こう側を指差す。
 すると、そこには確かに一頭のグレイウルフがいた。
 しかもそいつは、セシルに向かって猛進している。

 俺たちが先ほど倒した奴らに比べ、二回りも大きな個体が、セシルとリリアーナへ向かっているのだ。

「なんだよあの大きさは……!」

 もしかしなくても、あれが群れのリーダーだろうか。

 体長は二メートル超え。体重もかなりのものだろう。足もさっきの奴らより速い。
 セシルの体格では体当たりだけでも致命傷だ。
 それにセシルは今、鳥類らしき魔物に攻撃魔法を飛ばしている最中で、グレイウルフの存在に気付いていない。

「――セシル! 右だッ! グレイウルフがいるぞ!」