その後終盤の対決で、アレクは自ら、自分がロイド殺しの犯人であることを告白する。
俺はそのとき詳細までは聞かなかったから、すべてのルートでロイドが死ぬのかはわからない。
が、少なくとも、妹が最初に選んだセシルルートでのロイドは死んだはず。
けれど、今はもう状況が違う。
俺はラスボスになる気はないし、俺がロイドを殺すなんてことは絶対に有り得ない。
だからロイドは死なないはずだし、途中で殺されるポジションのあいつが真のボスであることは絶対にない。
そもそも、俺ごときにロイドを殺すのは不可能だ。普通に考えて、返り討ちにあって終わりだろう。
――俺は視えなくなったロイドの背中を無意識に探しながら、そんなことを考える。
するとそのときだ。
ロイドと入れ替わるようにテラスの扉が開いて、リリアーナとセシル、グレンがテラスに出てきた。
俺を見つけてパッと顔を明るくするリリアーナと、やや気疲れした様子のセシル。それと、どこまでもいつも通りなグレンがそこにいた。
「お兄さま、こちらにいらっしゃったのね! 気付いたらいないんですもの。探してしまったわ」
先ほどまで澄まし顔で社交していたのに、俺を見つけたとたん顔を綻ばせるリリアーナ。
ドレスの裾を揺らしながら俺のもとに駆け寄ってくる、愛しい妹。
その姿は、控えめに言って天使――。
(ああ、なんて可愛いんだ、リリアーナ……!)
俺はリリアーナのあまりの可愛さに、衝動的に腕を広げた。これはもう抱きしめなければなるまい、と。
だが、俺がリリアーナを抱きしめようとしたその瞬間、信じられないことが起こった。
なんと、俺からリリアーナを奪うように、セシルがリリアーナを背中から抱きしめたのだ。
「――はっ?」
行き場をなくした俺の腕は、虚しくも空をかく。
そんな俺の目の前で、セシルは見せつけるようにリリアーナの耳に唇を寄せ、囁いた。
「駄目だよ、リリアーナ」――と。



