「……は? ……アレク? 何、これ……?」
ユリシーズの頭からボタボタと滴り落ちる大粒の雫。ぐっしょりと塗れた服。
そして、地を這うような低い声。
極めつけは、俺をじっと見下ろす何の感情も無い瞳。
それは早々お目にかかれない、ユリシーズの絶対零度の怒りの眼差しだった。
(や……やらかした……)
「わ……、悪い! ほんとにごめん! でもわざとじゃないんだ! ただちょっと、魔力が切れちゃって……」
「うん? 今、魔力切れって言った? つまり君は、身体が治ったのをいいことにさっそく無茶をしたってことかな?」
「えっ」
「ほんと、いい加減にしろよ?」
「――ッ!?」
(こいつ、キャラ変してないか……!?)
俺は這って逃げだそうとする。が、ユリシーズに床ドンされ退路を塞がれてしまった。
「ユ……ユリシーズ……? あの……俺……男に床ドンされる趣味は……」
「は? 何言ってるの? 僕は今から、君に魔力切れの危険性をレクチャーするだけだよ」
「なら……この体勢じゃなくてもよくないか?」
「逆に、この体勢で困ることある? 逃げようったってそうはいかないからね?」
「…………」
(ああ、駄目だ。これはもう、言うことを聞く以外にない……)
「さ、アレク。楽しいお勉強の時間だよ?」
「……ッ」
――こうして俺はこの後小一時間、早朝の冷えた庭園でユリシーズからキツーイ説教を食らい、そのせいで二人揃って風邪をひくという何とも情けない展開になるのだが、それはまた別の話。



