【完結】転生したら乙女ゲームのラスボスだった 〜愛する妹のためにラスボスポジション返上します〜




 そこには驚くほど広い空間が広がっていた。

 どうやってこんな空間を作ったのかわからないが、天井高は七メートルほど。縦横は高校の体育館ほどあるだろうか。

 灯りはグレンの魔法でつけたのか。天井付近に炎が揺らめいていて、それが空間全体をぼんやりと照らし出していた。

 そしてそこには、リリアーナとセシルとグレン、それから、見上げるような大蛇の魔物の姿があって――。



「リリアーナ……ッ!!」


 俺がリリアーナの名を叫ぶと、セシルとグレンがハッとこちらを振り向いた。

 地面にうずくまるリリアーナの肩を抱くセシルと、大蛇と対峙するグレン。
 二人は俺の登場に驚いた様子で、同時に俺の名前を叫ぶ。


 ――俺はロイドに背負われたまま、すぐさまリリアーナの元へ駆け寄った。
 すると俺が地面に降りるより早く、セシルが俺に訴える。

「アレク! リリアーナが……!」

 その声は焦りに満ちていた。今にも泣き出しそうな顔をしていた。
 こいつでも、こんな顔をするんだな。そんな風に思ってしまうほどだった。

 そんな……いつになく動揺したセシルの様子に、俺は逆に冷静さを取り戻す。
 
「大丈夫だ、心配するな。リリアーナは俺が引き受ける。だから、セシルはあの蛇を倒してくれないか? リリアーナは蛇が駄目なんだ」
「――ッ!」

 俺の言葉に、ハッと悟った顔をするセシル。
 その瞳がグレンと交戦している大蛇を見据え――鋭い殺気を放つ。

「わかった。五分で終わらせる」

 そう宣言したセシルは、いつもの冷静なセシルに戻っていた。
 そんなセシルに、不意に声をかけるロイド。

「僕も一緒に戦っていい?」と。

 するとセシルは当然驚いた顔をしたが、ロイドの強さを見抜いたのだろう。黙って小さく頷き、ロイドと共に戦闘に加わった。