教室の中に居る誰かが私を振り返った。
私は、その子に近づく。
銀色の髪の男の子だ。目が紺色で、綺麗だった。
「誰なんだ?ここは、誰も、知らないのに」
「私は、三年二組の夜川水月(よがわみずき)
「二組?それじゃあ、俺の事、知ってたりするの?」
俺の事、知ってたりするって、何だろう。
「どういう事?」
「知らないって事は、先生は、俺の事、何も言ってないんだ」
「あなたは、誰?」
「三年二組、蒼井水斗(あおいみなと)。俺、不登校なんだ」
「もしかして、ずっと、空席の机のクラスメイトって」
「ああ。俺だよ」
蒼井君があの席の...。
「俺は、雨の日だけ、学校に通ってる」
「雨の日だけ?」
「外に出られるのが、雨の日だから」
「雨の日だから?」
「細かい事は、気にするな」
そこは、聞かせてくれないんだ。
「蒼井君、学校で幽霊の噂になってたけど」
「まあ、それは、それで、俺には、好都合だな」
噂も気にしない。
「ねえ」
「なんだよ」
すると、下校の時間を知らせる予鈴が鳴る。
早く、行かないと見回りで、先生がやって来る。
「もう、こんな時間か」
「私、行かないと」
「先生、見回り来るからか」
「うん」
でも、今、行ったら、もう、蒼井君と話せなくなる。
「夜川」
「えっ」
蒼井君に呼び止められた。
「さっき、何か、言いかけてただろ。何だった?」
その言葉が嬉しいと思った。
私は、蒼井君を振り向く。
「また、」
その言葉を待っていた自分が居た。
もう一度、伝える勇気がなかったから。
「また、会いに来ても良い?」
それでも、この言葉を伝えたいと思ったから。
蒼井君がため息をつく。
「どうしたものかな」
「嫌だった?!ごめんなさい。もう、会いに来ないから!」
「待てよ」
また、呼び止められる。
「俺、いつも、どこの教室に居るか、分からないし、雨の日しか、来ないけど、それでも良いか?」
「うん!会いに行くよ。どこに居ても」
「俺の事は、誰にも言わない事。後、来る時、バレるなよ」
こうして、私達は、出会った。