天使の心。



「……やれやれ。悪魔も恋をするなんて、予想外だったな……。でも、想いで欲を抑えられたなら、きっと本物の天使にだってなれるよ」

 白い羽根を広げ飛び立った白神ヒトヤは、二人の恋の行方を見守り満足そうに頷いた。
 欲望のまま動く悪魔と違い、天使は人間の幸せのために働くものだ。時にこうして人間に紛れて生活し、恋のキューピッドをすることもある。

 この学校担当のヒトヤは、とても真面目で模範的な天使だった。
 不幸を呼び込みがちだった望月ノエルに悪魔が近付いた時は心配だったものの、前向きに変わっていく二人の様子を見ている内に、彼こそが彼女の幸せに不可欠な最後のピースだったのだと判断した。
 その結果、二人の関係を後押しするためにフラれるための告白なんていう不慣れな一芝居を打ったのだ。

「でもまあ、天使だろうと悪魔だろうと……愛の前では皆平等だ。末永く幸せであるようにと、天使の加護付きで祈っておくよ」

 やがて日が沈み、もうすぐ夜がやってくる。もう嘘のない二人の夜は、月明かりのような優さに満ちているといい。
 ヒトヤはそんな願いを込めながら、大きな羽根を広げ、二人を祝福するように空を舞った。