お茶と妖狐と憩いの場

「…もし、男子(おのこ)が産まれていたらどうなっていたのでしょうか。子供を産めない方もいらっしゃったはずですがどうやって――」
「確か数十年前、男子続きで苦しんだ女がいたな」
 花嫁を考えれば当たり前だが、娘が産まれるとたいそう喜ばれ、逆に男子が産まれると女子(めのこ)を出産するまで永遠と妊娠させられていたらしい。なんでも、長から直接産まれていなければならないという決まりがあったからだ。折成さんによると、私の祖母に当たる少女は、元々身体が弱かった上に男子続きで、私の母を産む頃にはぼろぼろになってしまったという。使い物にならなくなった祖母は、私の母を育てることもままならないまま、長に吸収される形でこの世を去った。
 まるで道具のような扱いに、我慢していた涙が零れてしまう。身体に支障が出る程無理をさせていたなんて、こんなにも悲しいことはない。私は折成さんに「男の子達はどうなったんですか」と、震えながら聞いた。
「…死んではないから安心しろ」
「…っよかった」私は安堵し涙を拭う。
「だが、そいつらは親の顔も知らないままだろうよ。あくまで人間として外へ売られちまったんだ」
「……それは…ある意味、幸運だった。のかしら……」
「ある意味、な…。行き先にもよるだろうが」
 折成さんは視線をずらす。
「それと…、昔は今よりもっと長い歳月をかけて生贄は送られていた。長との子供を何人も産み落とした先祖は多いし、管理体制も全然違っていた」
「…今は縮まっているんですか?」
「あぁ、長の年齢も関係してるんだろうな。年々早まっている気がする」
 だからこそ、祖母にあたる女性は無理矢理にでも女子を出産させられたのではないか、折成さんはそう唱えた。
「……?」
「なんだ?」
「ま、待ってください。でも…、そうなると、私にも、私達にも…鬼族の血が入っていることになりませんか…? 長との子なら…人間の娘っていうのも、所謂、建前…?」
 私は信じられないといった様に口元を抑える。
「そういうことに…なるな」
「………え、えぇ…っ。だって、私…鬼族っぽい特徴なんて、ありませんし…っ」
 人間として生きてきたのに、鬼族の血が半分…それ以上入ってたとなると話は変わってくる。普通に聞き流していたけれど、生贄の次に衝撃の現実だ。混乱に陥った私は、涙を流したまま意味もなく、見たことも触ったこともない自身の角を探し始めてしまう。
「ない…ですし、力もありません…」
 ちんぷんかんぷんで頭がぐるぐる回った。