お茶と妖狐と憩いの場

 私は昂枝の手を取って「自分は大丈夫だ」という事を伝える。
「結望…」
「勿論、俺もお前を鬼族の元へ渡す役割がある。それは今も…変わっちゃいねぇんだよ。お互い……、今は仕事を放棄しているだけだ」
 折成さんは大きく溜息を吐く。
「笹野結望、お前は………やっぱ狐達の所へ行くよりもずっと遠くへ逃げるべき――」
「それは駄目…!」
 私は繋いでいた手に力を入れてしまうくらい、力強く言い放った。
「深守と想埜、二人が無事でいることが私の願いなんです。……私以外の皆が生きているなら、それで十分。それこそ……、生贄になってもいいくらいには」
「…っ、ふざけるな……!」
 折成さんは私の両肩を勢い良く掴んだ。
「そんな事言うな…! お前は、お前達には…何の罪もないだろうが。この世に捧げて良い命なんかねぇんだよ。そもそも、狐がお前を必死に守ろうとしてるのは何なんだ? お前に生きていて欲しいからだろうが! お前のことが好きだからだろうが…! って、あ~もう、お前ら自己犠牲が激し過ぎんだよ馬鹿! この先自ら生贄になるなんて言ったら許さねぇからな」
 チッと舌打ちをして、またそそくさと歩き出してしまう。
「ご、ごめん…なさい……」
 私は後ろから折成さんに謝罪を零す。
「………俺も、お前には生きていて欲しいよ」
 昂枝は折成に同感だ。と、困ったように私の頭を撫でて、また手を握る。
 私は、私のことを好きだと勇気を振り絞って告白してくれた人の前で、とても酷いことを言ってしまった。申し訳なくて、顔が見られなくなってしまう。
 深守達も私の発言を聞いていたら、怒っただろうか。それとも悲しませてしまったろうか。命を張ってまで守ろうとしている相手がこんなでは、深守もやるせないだろう。だって彼は、最初から全てを知っていて、鬼族と宮守家から私を救い出そうとしてくれていたのだから。