「っ想埜ちゃん…!」
心配して駆け寄ろうにも、当たり前に縄が邪魔して一歩たりとも動けない。深守は人間に化ける事で縄をどうにか出来ないかと考え念じるものの、いつものように化ける事が出来なくなっているではないか。いくら力がほとんど無い、放っておいてもそのうち死ぬような妖でも、変化くらいは出来るだろう。そう思うのに上手くいかないのだ。
「ど、どうしてなの……」
「…ふん、お前程の妖でも此処の制御には勝てないさ」
深守の呟きに海萊は意気揚々と返す。
「どういう事…?」
「簡単に教えるわけが無いだろう。………だが一つだけ」
そう言うなり立ち上がり深守に近づくと、目の前でしゃがみ込んだ。そしていとも簡単に首根っこを掴んでみせる。
「っぐ…」
「我々妖葬班の仕事をよく思い出せ」
軽々と持ち上げられた深守は、今自身がただの狐でしかないことを実感した。
想埜の方を一瞥するが、一向に目覚める気配がなく焦りが募る。ただ息はあるのか、呼吸をする度に身体が上下に動いていることだけが救いだった。
「そういう事だから、お前らは暫く此処で大人しくしていろ」
ぽい、と塵芥を捨てるように深守を手放すと、出入口と思しき扉に向かい手を添えた。その時、小声で何かを話す声が聞こえたが、上手く聞き取ることが出来なかった。おおよそ外にでも立っている見張りに声をかけたのではないかと推測する。
軽く手を振りながら立ち去る海萊を不服ながら見送ると、深守達は狭い一室に閉じ込められる形となった。
「想埜ちゃん、想埜ちゃん!」
深守はとにかく彼を目覚めさせようと声を掛ける。ただ揺すって起こすことも、叩き起すことも出来ないのは致命的だ。
「……どうしたもんかね」
溜息がはぁ、と漏れる。こんなにもがっちりと足が固定されていると、立ち上がることさえままならない。
そもそも彼はどうして眠っているのだろうか。深守は自身が気を失った理由を理解しているが、想埜が眠りについている理由については全くわからなかった。
「あの子達は家にいると言っていたけれど大丈夫かしら」
もし、想埜と同じように眠らされていたら?
それより彼は――昂枝は結望の味方であり続けていてくれるのだろうか。これはあの子一人で戦える問題ではない。宮守家、鬼族の問題なのだ。
勿論、妖葬班もきっと―――。
万が一家にいるというのが海萊の嘘で、既に鬼族に手渡されているのなら。
「――こうしてはいられないのに、もう…!」
深守は動かせない前足を見ながら、やるせなさで心がいっぱいいっぱいになった。
心配して駆け寄ろうにも、当たり前に縄が邪魔して一歩たりとも動けない。深守は人間に化ける事で縄をどうにか出来ないかと考え念じるものの、いつものように化ける事が出来なくなっているではないか。いくら力がほとんど無い、放っておいてもそのうち死ぬような妖でも、変化くらいは出来るだろう。そう思うのに上手くいかないのだ。
「ど、どうしてなの……」
「…ふん、お前程の妖でも此処の制御には勝てないさ」
深守の呟きに海萊は意気揚々と返す。
「どういう事…?」
「簡単に教えるわけが無いだろう。………だが一つだけ」
そう言うなり立ち上がり深守に近づくと、目の前でしゃがみ込んだ。そしていとも簡単に首根っこを掴んでみせる。
「っぐ…」
「我々妖葬班の仕事をよく思い出せ」
軽々と持ち上げられた深守は、今自身がただの狐でしかないことを実感した。
想埜の方を一瞥するが、一向に目覚める気配がなく焦りが募る。ただ息はあるのか、呼吸をする度に身体が上下に動いていることだけが救いだった。
「そういう事だから、お前らは暫く此処で大人しくしていろ」
ぽい、と塵芥を捨てるように深守を手放すと、出入口と思しき扉に向かい手を添えた。その時、小声で何かを話す声が聞こえたが、上手く聞き取ることが出来なかった。おおよそ外にでも立っている見張りに声をかけたのではないかと推測する。
軽く手を振りながら立ち去る海萊を不服ながら見送ると、深守達は狭い一室に閉じ込められる形となった。
「想埜ちゃん、想埜ちゃん!」
深守はとにかく彼を目覚めさせようと声を掛ける。ただ揺すって起こすことも、叩き起すことも出来ないのは致命的だ。
「……どうしたもんかね」
溜息がはぁ、と漏れる。こんなにもがっちりと足が固定されていると、立ち上がることさえままならない。
そもそも彼はどうして眠っているのだろうか。深守は自身が気を失った理由を理解しているが、想埜が眠りについている理由については全くわからなかった。
「あの子達は家にいると言っていたけれど大丈夫かしら」
もし、想埜と同じように眠らされていたら?
それより彼は――昂枝は結望の味方であり続けていてくれるのだろうか。これはあの子一人で戦える問題ではない。宮守家、鬼族の問題なのだ。
勿論、妖葬班もきっと―――。
万が一家にいるというのが海萊の嘘で、既に鬼族に手渡されているのなら。
「――こうしてはいられないのに、もう…!」
深守は動かせない前足を見ながら、やるせなさで心がいっぱいいっぱいになった。

