私はここで悲鳴を上げたら負けだと、相手を真っ直ぐに注視する。
「……私は、貴方とも手を取り合いたいです。生贄だから、とか関係なく……一緒に乗り越えたいんです。そこに種族も立場も関係ありません」
「羅刹様は喜ばぬ」
「その、羅刹様の言葉……、直接聞いた事はありますか……? 耳を、傾けた事はありますか?」
「羅刹様の事は喋らずとも理解出来る」
空砂さんは私を引っ張りあげる。身体は簡単に持ち上がり、足がぷらぷらと宙に舞った。首を直接絞められている訳ではないが、息をするのがやっとだ。
「ほん、とうに……?」それでも私は続けた。「先程…、意識が羅刹様と……母と繋がっている時、一瞬だけ、聞こえ……ました。もう――死にたいと……」
「嘘をつくではない」
「嘘では、ありません……っ。羅刹様は、延命を……望んでおりません。……だ、……だから……」
続けようとした時、空砂さんは私の胸ぐらを掴んでいた右手を手放した。私はそのまま床に倒れかけた――のだけれど、深守と、海萊さんが間一髪のところで助けてくれた。
「ありが……とう、ございます……」
「んもぅ、結望ったら無茶しすぎなんだから……」
「……人の事言えませんよ」
深守は私を強く抱き締めると、海萊さんを一瞥した。「アンタにも、多少……情があるのね」
海萊さんは軽く舌打ちをすると、面倒臭そうに立ち上がる。
「は~あ、やってられっか」
「あ……、無理に動くと……」
「五月蝿い」
制止するも軽く振り払われ、社の外へ向かって壁伝いにゆっくりと歩いて行ってしまう。途中鬼族が襲ってくるも、額に一発入れる程度でその場から居なくなってしまった。神出鬼没で感情的、それでいて私達の敵でもあるけれど…。もしかしたら、わかり合える人なのかも。なんとなくそう感じた――。

