お茶と妖狐と憩いの場

 ――はぁはぁと、息が上がる声だけが聞こえてくる。
 二十人いた上役達は、皆倒れ伏せて、身動きが取れなくなっていた。致命傷は避けているものの、当分起き上がることはないだろう。
 折成さんは、鬼族相手によくここまでやったと、自分達を賞賛すると共に、目の前の敵にだけ集中出来る事を喜んだ。
「ほう……、中々のものじゃな」
「……一苦労ですよ」
 昂枝は溜息混じりに呟く。刀を杖の様にして立つ姿は、体力、精神共にほぼ限界に近い。
「海萊」
「……ん? あ、空砂さん」
 空砂さんは静かに彼の名を呼んだ。海萊さんは深守と対峙していたが、何食わぬ顔で返事をすると、闘うのをぱっと辞めて社の中へと入って来た。「ご無沙汰しております。お元気で何よりです」
「あぁ、お前もご苦労であった。……ただ」
「申し訳ございません。力不足でした」
「……わかればよい」
 ごくごく普通に会話をする二人に、私達は狐につままれたような…言葉を失ってしまった。社内へ入ってきた深守も「何よ……」と目を見張る。
「気になるだろう。妖葬班の俺と鬼族の空砂さんの関係が」
 空砂さんの隣に並びながら、海萊さんは愉快そうに笑う。
「海萊よ、わざわざ言う必要はなかろう」
「うーん。まぁ、それもそうですね」
 妖葬班で妖を忌み嫌う海萊さんとは思えない立ち振る舞いに、一同は騒然としたままだ。そもそも、何故海萊さんが鬼族と仲間内なのか。
「……本当、お前らの仲良しごっこには感心するよ」
 海萊さんはそんな事より、と懐からとある物を取り出した。それは火縄銃にも見えたが、火縄銃にしては小さすぎる代物だった。鉄砲ではあるものの見たことのない武器に、警戒心が強まる。
「……アンタ、何するつもりなの?」
「こうするつもりだが?」
 パァンッと鉄砲の乾いた音が鳴り響く。
 一瞬の事で何が起きたのかわからなかった。だけど想埜の後ろでよろめいていた鬼族の上役一人が、心臓辺りから血飛沫を上げたのが見えた途端、とんでもない事が起きてしまったと脳が判別した。刀や槍も恐ろしいものだが、鉄砲はもっと恐ろしいものに思えて声にならない声が出てしまう。
 少なくとも、彼にとって上役は味方なのではないのか……? 空砂さんと関係を持っているのに、どうしてそんな事が出来るのか。
「俺は元々鬼族に興味などないからな」
 そう言いながら、倒れる上役達をどんどん撃っていく。空砂さんは止めることもせず、ただ佇んでいるだけだ。深守達も下手に動けば弾に当たることを危惧して、動向を見守る他無くなっていた。
「……火縄銃じゃないのか」
 昂枝は疑問を口にする。
「似ているが違うな」海萊さんは答える。「こうすることができる代物だ」
「なっ――!?」
「早く死ね、お尋ね者が」