お茶と妖狐と憩いの場

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 ゆらゆら、ゆらゆらと、私は暗闇を漂っていた。
 此処が何処なのか全然見当もつかないけれど、なんとなく夢の様な場所なのだと推察した。何も無いのだから、ただ茫として、時が過ぎるのを待つだけ。眠っていても、目覚めていても、全く同じだ。
 だけどある瞬間、私の頭の中に私の知らない記憶が流れ込んでくる感覚があった。
「……おかあ、さま……?」
 ぽつ、と出てきた言葉に驚く。突然何も無い所に現れたのは自身の母親だった。
「結望……、ごめんなさい」母は謝った。「同じ目に合わせてしまったわ」
「……っお母様!」
 私は今にも泣き出しそうな母に駆け寄ると、そのまま抱きついた。夢でも何でも良い、母の温もりを感じられるのなら嬉しかった。
「結望、……あぁ、愛しい子」
 母もぎゅっと抱き締め返してくれて、久しぶりの感覚に私まで泣き出しそうだ。
「お母様……会いたかったです。ずっと、ずっと待ちわびておりました」
「えぇ、えぇ……私もです。大きくなりましたね、結望」
 母は私の頭をそっと撫でる。
 懐かしい、幼少期の頃を彷彿とさせた。
「結望……私は、貴女に酷いことをしました。……あんなに幼い貴女を置いていってしまったのですから」
「それは、悪く言わないでください。お母様のせいではありません」
「……違うのです。私は、……っ」 
「お母様……っ」
 母は倒れ込むように大粒の涙を零した。亡くなった理由が理由だから、どうしようもない感情に押し潰されてしまうのだろう。
 私はそんな母を抱き締めることしか出来ない。
「あぁ……でも、貴女の元へ――神様が助けに行ってくれたのね」
 そう、母は言った――。