「何をしておるのじゃ」
夫婦杯を見守る空砂さんが言った。
「あ………ぁ、……すみ、ません……」
「何か」
「いえ……」
どうしよう、飲めない。
私は目の前にある二杯目の杯を飲むことが出来ない。
杯の中に汗が滴り落ちてしまいそうな程、緊張感で押し潰されそうになっている。空砂さんだけではない、上役もおよそ二十人私を見ているのだ。それでいて動けなくなっているなんて、長の婚約者として恥晒しになる行為だ。長との結婚を認めたくないと言っているようなものなのだ。
だけど、だけど――。
拒否反応から来る身体の硬直が溶けずにいると、空砂さんが立ち上がりこちらへ歩を進めるのが見えた。何をされるのだろう、目が泳いで合わせられない。目線を下げて、目を閉じる。一瞬でも良いからと、現実から逃げようとした。
「んんっ!」
突如両頬を固定され、唇に柔らかい物が触れたのを感じた。目を開けると、空砂さんが私に口付けをしていた。正確には、口移しだ。杯がトンッと畳に落ちる音が静かに響く。
「ん、ん……っ」
私があまりにも飲まないから、空砂さんは無理矢理にでも液体を飲ませようとしたのだ。夫となる人の目の前で、と思うけれど、きっと彼にとってそんな事はどうでもいい事だった。この液体を花嫁に飲ませられれば、都合良く事が進めばそれで良いのだ。
引き剥がそうにも私の力ではどうにもならず、ごくごくと喉を鳴らす。その度に身体に異変が起きるのを実感する。身体が別の意味で動かず、身動きが取れなくなってしまったのだ。思考回路はまだ回っているはずなのに、言うことを聞かない。声を出す事が出来ない。助けを呼べない。空砂さんが身体を離した時には自然と倒れ込んでしまった。
「抵抗しようがしまいが、結局は同じことじゃ」
空砂さんは倒れる私の元に膝を着くと、「ただ暴れなかっただけ良い方かのう。暴れておったら、二度と狐達に会えなくなっていたところじゃ。…まぁ、逃げなかったお前には慈悲を与えてやろう」そう言い私の額に手を置いた。
そこで私の意識は途絶えてしまった。
夫婦杯を見守る空砂さんが言った。
「あ………ぁ、……すみ、ません……」
「何か」
「いえ……」
どうしよう、飲めない。
私は目の前にある二杯目の杯を飲むことが出来ない。
杯の中に汗が滴り落ちてしまいそうな程、緊張感で押し潰されそうになっている。空砂さんだけではない、上役もおよそ二十人私を見ているのだ。それでいて動けなくなっているなんて、長の婚約者として恥晒しになる行為だ。長との結婚を認めたくないと言っているようなものなのだ。
だけど、だけど――。
拒否反応から来る身体の硬直が溶けずにいると、空砂さんが立ち上がりこちらへ歩を進めるのが見えた。何をされるのだろう、目が泳いで合わせられない。目線を下げて、目を閉じる。一瞬でも良いからと、現実から逃げようとした。
「んんっ!」
突如両頬を固定され、唇に柔らかい物が触れたのを感じた。目を開けると、空砂さんが私に口付けをしていた。正確には、口移しだ。杯がトンッと畳に落ちる音が静かに響く。
「ん、ん……っ」
私があまりにも飲まないから、空砂さんは無理矢理にでも液体を飲ませようとしたのだ。夫となる人の目の前で、と思うけれど、きっと彼にとってそんな事はどうでもいい事だった。この液体を花嫁に飲ませられれば、都合良く事が進めばそれで良いのだ。
引き剥がそうにも私の力ではどうにもならず、ごくごくと喉を鳴らす。その度に身体に異変が起きるのを実感する。身体が別の意味で動かず、身動きが取れなくなってしまったのだ。思考回路はまだ回っているはずなのに、言うことを聞かない。声を出す事が出来ない。助けを呼べない。空砂さんが身体を離した時には自然と倒れ込んでしまった。
「抵抗しようがしまいが、結局は同じことじゃ」
空砂さんは倒れる私の元に膝を着くと、「ただ暴れなかっただけ良い方かのう。暴れておったら、二度と狐達に会えなくなっていたところじゃ。…まぁ、逃げなかったお前には慈悲を与えてやろう」そう言い私の額に手を置いた。
そこで私の意識は途絶えてしまった。

