「素敵な、人だった……」
驚きから狼狽へ、そしてそれがゆっくりゆっくり喜びに替わるその表情。
わたしが知っている昨日までのセイジと同じ人なのかな。
昨日までのセイジは、わたしをこんなにドキドキさせただろうか?
もう一度わたしに伸ばされるその手。
それがわたしの頬にかかる寸前、わたしは下を向いた。
涙をこらえればこらえるほど、口元が小刻みに痙攣し、震えてしまう。
また、わたし、人を好きに、なってしまったのかな。
まだ本当は傷だって癒えていなくて、喜びと鋭い痛みが表裏一体のような、恋愛というもの自体が怖いのに。
避けて避けて、にげまわっていたその場所に、強引に引きずりこまれてしまった気がする。
まだ引き返せる?
まだ、逃げられる?
気がつかなかった頃に戻れる?

