セイジの黒い髪に細かい水滴が留まる。
いつもよりずっと早く歩く彼に手を引かれながら、水の粒子で煙る彼の髪が綺麗だ、とこの場にそぐわないことをぼんやりと考えていた。
「セイジ……ここは。どうして?」
石造りの土台にコンクリートむき出しの、古いけれどそれがお洒落な趣を醸し出している建物。
オフィスビルじゃないのは明白だった。
セイジはここまで来ても何の説明もなしにわたしをエレベーターに押し込み、15のボタンを押した。
アパート、だわよね。
エレベーターを降りると一つの部屋の前で立ち止まる。
鍵を開ける。
怒りに支配された無表情のまま、わたしを中に引っ張り込むと音を立てて鍵を閉めた。
「セイジ、これは……どういう?」
日本のライフスタイルが抜けないんだろう彼の部屋は、いつもは玄関で靴を室内履きに履き替えている形跡がある。

