玲志の言葉に、香蓮は無意識に息を止めた。
彼が距離を詰めたことでベッドがギッと軋み、香蓮の鼓動がさらに早くなる。
「でも一度は、君への想いは闇へ葬ったつもりだったんだ」
玲志は自虐的な笑みを浮かべ、香蓮から視線を外す。
「再会して君を嫌いになり切れない自分が嫌いだった。君を無意識に求めてしまっているのが、父に申し訳なくて。だから冷たい態度をとっていたんだ……本当にすまない」
「玲志さん」
玲志の複雑な心境が伝わってきて、香蓮の胸がぎゅうっと締め付けられる。
(玲志さんの苦しみをすべて知るなんてできない。だけど……逆の立場だったら同じように苦しむはずだわ)
重い沈黙が数秒あったのち、突然、香蓮はベッドに乗せていた右手に温度を感じた。
緊張しながら顔を上げると、再び熱い瞳と視線が絡む。
「香蓮、君を愛してるよ。今も昔も」
香蓮は思わず息を吞み重なった手を握り返すと、さらに強く握り返された。
「君の気持ちを聞かせてくれるか?」
目をそらすことも許されないくらい、玲志に熱い眼差しを向けられる。
香蓮は気持ちが昂りすぎ呼吸するのも苦しいくらいだったが、やがてうっすらと唇を開いた。
「私も、ずっと愛してます。今も、昔も……」


