冷酷社長が政略妻に注ぐ執愛は世界で一番重くて甘い


 実母が亡くなってから香蓮が家族写真の中に加わることがなくなったので、高校生以降の写真はほとんどない。

 玲志は黙って一枚一枚アルバムをめくる。

 香蓮が玲志と離れたのは、高等科に上がる直前。

 入学式と書かれた板の前で笑う香蓮を見て、玲志はふっと口元を緩めた。

 「無事に進学できてよかったな」

 「その節はありがとうございました」

 当時毎日のように玲志に勉強を見てもらっていたというのもあり、香蓮自身、彼に無事に進学できた姿を見せれてよかったと思う。

 (玲志くんとの写真ばかり見ていたから、そっちのアルバムを見るのは何年ぶりかしら)

 香蓮はそんなことを思いながら玲志の隣でアルバムを覗き込んでいると、最後のページに一枚の封筒が挟まれているのに気づく。

 「これ、なんだ?」

 玲志も気づき、すぐにアルバムから封筒を取り出した。

 表に書かれた宛先名を見た途端、香蓮の血の毛がサッと引く。

 「“玲志くんへ”? これ、俺宛……?」