彼の言葉に、香蓮の心臓がドキリと音を立てた。
玲志が会社の人間以外に妻として紹介してくれたことは今までなかったのだ。
「あら……長い時間失礼いたしました。奥さま」
女性に愛想笑いを向けられて、香蓮が玲志に腕をとられたまま腰を折る。
「い、いえ。とんでもございません」
「香蓮。行こう」
玲志は囁くと彼女の腕を引き寄せて、しっかりと腰に手を回し歩き出す。
急に密着した形になったせいか、香蓮の体温が一気に上がってしまう。
ちらりと視線を後方に送ると、女性たちはすでに笑っておらず冷ややかな目で香蓮を見ていた。
一瞬ひるみそうになるが、香蓮は気を取り直して玲志と一緒に会場へと入る。
(ああいう視線、もう慣れっこなの。私も玲志さんの妻として強くならなくちゃ)
その後会場に入ってからは、玲志に気づいた取引先の社長や上層部の社員、資産家たちが挨拶にやってくる。
「奥様も本当にお綺麗ですね。ふたりともとってもお似合いですよ……!」


