香蓮は申し訳なさから頭を垂れ、ぎゅっと目をつむる。
「ごめんなさい。父が失礼なことを言って」
「香蓮は悪くない。それに話したくないなら無理に連絡をとらなくていい。俺が君の代わりに対応するから」
玲志は香蓮の肩を抱き、自分の懐に引き寄せて彼女の髪に顔をうずめた。
「君の辛そうな顔を見るのは、心が痛む。俺といる限り、無理をする必要はない」
「玲志さん……本当に、ありがとうございます」
玲志の心強い言葉に、怯え凝り固まっていた香蓮の体がふわりと和らぐ。
(本当になんて優しいんだろう。心が落ち着いてくる)
香蓮は玲志の背中に腕を回し、ありったけの力で抱きしめる。
「もう父たちとは会いたくありません。私には、玲志さんがいてくれたら何もいらない。愛してます」
「俺も愛してるよ、香蓮」
引き寄せられるように彼らは唇を交わし、ベッドの海に沈む。
今晩は一回きりだと言っていたのに、結局ふたりが眠りについたのはずっと先だった。


