情事が一度終わり、ほっと息吐く間もなく玲志が香蓮の唇をついばむ。

 「あと一回……だめか?」

 「だ、だめです。最近睡眠不足だし、このままだとお仕事に支障が出てしまいます」

 玲志の秘書でもある香蓮はやや強気な眼差しを向ける。

 何せ明日は、数件の会議が終わったのち、一か月も前から決まっていたパーティがあるのだ。

 (私もたくさんの人に合うし、寝不足で上手く話せなかったら玲志さんに迷惑かけちゃう)

 すると玲志は不服そうにじっと香蓮の顔を見ると、突然彼女の目元を指先でなぞった。

 「そうだな。香蓮も少し隈が出来ているし、今日はこの辺にしよう」

 「はい! また明日しましょ……」

 途中まで言いかけた香蓮だったが、恥ずかしくなり口を噤む。

 (私ったら、自分からなんてこんなことを)

 玲志はその様子を見てくすっと笑うと、彼女の額に淡いキスを落とした。

 「また明日も、愛したい」

 そっと囁かれ、香蓮の熱が上がる。

 何度聞いても飽きない。愛する人の口から零れる艶やかな言葉は、香蓮の胸をときめかせた。

 香蓮と玲志が見つめ合っていると、ベッドサイドテーブルに置いていた香蓮のスマホが、ガタガタと音を立てて震え出した。

 「こんな時間に誰だ?」