だけど、だからこそ何にも持っていない価値ナシ人間の自分が嫌になるんだ。
【ありがとう】
スマホで文字を打つのも、ペンで文字を書くのもすっかり慣れてしまった。
わたしはもう一度、声を出すことができるのかな。
でも、自分の気持ちを音にするのは怖い。
「紗那ー!会いたかったぞー!本当に無事でよかった!」
お母さんと話をしていると、病室のドアが勢いよく開けられてお父さんが入ってきた。
その手には本屋さんの袋があって、お母さんの言う通りわたしのために買ってきてくれたことが見てわかった。
「ちょっとあなた、声が大きい」
お母さんが苦笑いしながらお父さんの背中をポンポンと叩く。



