私と新庄は、城の最上階から1階外の小さな庭園にやって来た。

「そういえば、ここの庭について古い言い伝えがあるのを知っているか?」

私は首を横に振った。


「うむ。では少し話そうか。こっちだ。」



新庄は、私の手を握ったまま、庭の奥へと歩みを進めた。

庭の奥へ進むと、色とりどりの花々が、月の光に照らされて輝いていた。


夕方に誰かが水をやったのだろうか。
…それとも、知らない内に雨が降ったのだろうか。
彼らは水滴を身にまとっており、心地よさそうに夜風に揺られている。
やがてその衣装は雫となり、青々しい芝生へ身を委ねた。




「綺麗だろう。ここは、私の曽祖父が生まれるより以前から受け継がれてきた小さな花園だ。」__

新庄は、その場に座り込み、桃色の花に目線を向けた。
花を1本地面から抜き取ると、立ち上がった。
すると、それを彼自身の鼻先にやり、瞼を閉じた。
口角は少し上がっていた。

月明かりを背景に、彼の美しい横顔が目に留まる。


「ここでの言い伝えは、」___



新庄は、そう呟きながら私に近寄ると、その花を私の髪にそっと差した。



「愛する者や大切な者に、ここの庭の花を送ると、両者の願いが1つ叶うというものだ。」

「愛する者、…大切な、者…」

「…ただの言い伝えだがな。それでも、私はとても美しい言い伝えだと思う。これを契機に、相手に想いを伝えることだって出来るのだからな。」

「……」

私が何も言えないでいると、新庄は大きく笑った。
彼がこんなに大きく笑っているのは、初めて見た。


「ははは。所詮は伝聞だ。貴方は少し真面目すぎる。」

「す、すみません。」

「だけれど、…そんなところも、貴方の善い所だと私は思う。」


不思議な気持ちだ。
彼と一緒に過ごす時は、私にとって心の安らぐ時間のように感じる。

その仕草や言葉に胸が高鳴り、
もっと彼を知りたい。
彼の傍に寄りかかりたい。


そんな、暖かい気持ちになる。






「……これが、」



「ん?何か言ったか?」

「あ、いえ…」


そうか。これが、「幸せ」という気持ちなのだ。
彼といると私は幸せなのだ。
彼のことを考えると胸がいっぱいになる。


そうか。これが、「好き」という感情なのだ。