恋愛ってこんなもんだと思っていたけれど、そういう気持ちだといずれ上手く行かなくなるとは薄々思ってはいたのだ。
「あのさぁ花月、あいつなんかより、人気で仕事もできて……花月に優しい人がここに居るんだけど?」
目の前の彼は立ち上がると、私に向かって身を乗り出してくる。
じりじり迫る彼から、顔を背けた。
「……冗談やめて」
「えっそうじゃないの?」
「いや……合ってる。合ってはいるけども!」
これはヤバいと逃げようとしたが、彼は腕を掴んで引き留める。
「もう親父から認めてもらったから、俺も手加減無しで行くよ?」
「な、何のこと……?」
「長森さんの目もあるから花月の実力が認められないうちはまずいだろって思ってたけど……でももう関係ないよね」
顔は下を向けたまま、ちらっと上にある彼の顔を見る。
それはあの、キスをした時のヘラヘラした顔ではなくて、真剣で、少しだけ自信がなさそうな、初めて見る彼の顔だった。
「俺から逃げ回ってたから、てっきり嫌われてんだと思ってたけど、そうじゃないみたいだし。彼氏いるっぽいから調査してたけど、もう別れてたし。花月、俺は真剣だよ。花月は俺のこと、どう思ってる?」
真っ直ぐ見つめる目に、捕らえられて動けない。
彼はちゃんと気持ちを伝えてくれた。
──だからちゃんと私も、返さなければいけない。



