「正直、わからないんだよね」
確かに私に対しても、すごく優しい人ではあった。
──だけども。
「確かにあの人は私に優しかったよ。入社当時さ、私がやっぱり『コネ入社』って噂が立ってたの。特に新卒ですぐ企画部の配属はおかしいって。その時にさ、『俺でも入れなかったんだから実力はあるでしょ?見習ったら?』って言ってさ、みんなから庇ってくれたんだよね」
うちの会社の企画部は会社の顔であり、そう簡単に入れない人気の狭き門だ。
大体他の仕事を経由して、そこから適正を見られて配属になるので、最初から企画部に配属された私はかなりの例外だったのだ。
だからコネ入社だけど後から所属した実鈴より、少し優越感に浸っていたのは本当。
更に人気だった諒弥と隠れて付き合ってたことも、実鈴よりも優越感に浸っていたことの一つだった。
「でもさ、今思えば……ただ人気の人と隠れて付き合ってるっていう優越感に浸りたいだけだったのかも……」
確かにそれなりに、彼のことは大切にはしていたはずだ。
でも何だかしっくり来なかったのは本当で、振られたことに深追いするほど夢中にはなれなかった。



