雨の日だけの秘密の顔で

次の日も雨が降っていた。
放課後、帰ろうとしていたとき。
教室を出たところで伊吹くんに声をかけられた。

「よう。クレープ食べにいかない?」
「えっ?こんな雨の日なのに?」
「俺のおごり。昨日のお礼」
「おごられるほどのことはしてないような……」
「じゃあデートのおさそい」

デート!?
って叫びそうになったのを何とかガマン。

「すごい冗談だね……」
「別に冗談ってわけじゃないんだけど」

そんな。またまた、冗談ばっかり。

でも伊吹くんの気分がちょっとでも明るくなってたなら……嬉しい。
わたしだって役に立てるんだなって、なる。


「水沢が一緒にきてくれたら、雨の日でも何かいいことあるって思えるし」
「うーん、そっかあ」

伊吹くんと、また二人きり。
なんだか、ちょっとズルしたみたい。
迷ったけど、でも彼の笑顔が見たい気持ちの方が強かった。

「じゃ、一緒に行こっか!」

そう答えた時の伊吹くんの笑顔。
太陽みたいだった。
ドキドキしちゃった。