雨の日だけの秘密の顔で

ひとりで帰った、次の日、の放課後。
かなり気まずいのに、今日は雨でもないし……。
一日中、伊吹くんと話せなかったし、目も合わせられなかった。

怒ってたらどうしよう……。
暗い気持ちで帰りの準備をしていたら、いつの間にか教室にはわたしと伊吹くんだけ。
伊吹くんがわたしの席までやってきた。

「昨日さ、どうしたの?」
「えっと……」

怒ってる感じじゃなかった。
少しほっとする。
でも、困ってるような、ちょっと悲しそうな感じ。

「先、帰っちゃったからさ。なんか用事とかあった?」
「用事とかじゃない……」
「じゃあなんで?」
「……だって伊吹くんは」
「俺が、なに?」
「C組の子と一緒だったし」

伊吹くんは、びっくりした顔。
あの後、やっぱり一緒に帰ったりしたのかな。
告白されて、付き合ったりとか……。

考えるとなんだかどんどん気持ちが沈んできた。
伊吹くんは、わたしだけのものじゃないのに。

「水沢、あのさ。誤解してる」
「誤解?」
「俺、別にあの子と付き合ってるわけじゃないから」

伊吹くんがすごく近い。
じっと目を見つめられると、心臓の音がドキドキ大きくなる。

「あの子が好きなのは、いつもの俺だって。みんなだってそう。でもさ、俺だってにこにこできないときもある」

伊吹くんは寂しそうな顔になる。
そうだね。
つらいとき、あるよね。
雨の日の表情を思い出すと、胸がキュッとなった。

「俺が好きなのは、それでも良いって言ってくれたやつ」
「ん?それって?」
「水沢だよ。鈍いんだから」