「なんでもっと早く相談してくれなかったの!ヤバいじゃん、それ、色からして!」

周りのクラスメートに聞こえないよう気を遣いながらも、智ちゃんは盛大に驚き、そして怒った。
そして、あろうことか、放課後、橘君を目の前に連れてきた。空き教室で、橘くんと向き合う。

「橘君のおうちって確かお寺だったよね」智ちゃんが橘君に話しかける。

「・・・そうだけど」

「由奈、それ見せてあげて。人に知られたくないとか言ってる場合じゃないでしょ。」

「はい。」
怒る智ちゃんの迫力に負け、腕をまくって見せると、橘君が静かに息をのむ音がした。

「ね、緊急事態なの。分かるでしょ。なんとかお祓いとか頼めない?」

「ちょ、ちょっと待って、智ちゃん。まだ何が原因かも分かってないし、私がどこかにぶつけたたけなのかも。」

「お祓いして、何もなかったらなかったでいいよ。でも何かあったらどうするの?できること全部やってみよう。本当に心あたりはないの?」

「ないと思うけど・・・」
正直本当に心当たりはなかった。だからこそ余計に気味が悪い。

「でも、橘君だって急にこんな相談されても困るよね?」

視線を腕の痣に落としていた橘君がじっとこちらを見る。
薄茶色の、こちらの心の奥まで見透かすような目。いつも横顔ばかり見つめていたから、イケメンは真正面から見てもイケメンなんだなあ、と場違いなことを考えてしまう。

「僕は構わないよ。お祓いで解決できるか分からないけど、早い方がいいと思う。今日、このままうちのお寺寄っていける?」

「あ、うん」

「ごめん、一緒についていきたいけど私今日は用事あってダメだ。明日結果教えて。」
智ちゃんが顔の前で手を合わせる。

そんなわけで、放課後橘くんと二人、無言でお寺まで歩いている。