インストールを開始しますか?

教室へ行くと、友達の由希奈、奏美(かなみ)が後ろの方の席で向かい合ってスマホを見てる。
 
なんかちょっと楽しそう。

「おはよ」
 
声をかけるとふたりとも顔をあげた。

「あ、おはよ。愛梨」
 
でもすぐにふたりはまた画面に戻ってニヤニヤしてる。

「なに、なんかあった?」
 
問いかけると奏美が答えた。

「昨日のグループチャットで話題になってたアプリだよ。愛梨、インストールした?」

「ああ、あれね。わたしはまだ。ふたりともインストールしたの?」
 
そう言ってわたしは愛梨のスマホの画面をのぞきこんだ。
 
グループのURLからアプリストアに飛んだところだった。
 
黒いアイコンの中に、カスタマイズママって書いてあるシンプルなデザインに、わたしは一瞬、ぞくっとする。
 
ホラーゲームのアイコンかと思っちゃった……

「わたしは昨日、インストールしたんた」
 
由希奈がふふふと笑った。

「え? まじ? どうだった?」
 
すると由希奈は、ニヤニヤしながらカバンを開ける。サイフの中から、一万円札を取り出した。

「え? なになに? どうしたの?」

「これ、ママからもらったんだ」

「え! どういうこと?」
 
すると由希奈は、一万円をしまい、説明しはじめた。

「このアプリ、最高だよ。本当にママをわたしの思いどおりにあやつれるの! 家のママってケチじゃん? 愛梨と奏美んとこみたいにお小遣いくれないし。ちょうだいって言ったら、家は片親なんだから余裕ないの!とか言って」
 
由希奈ん家は、パパがいなくてママだけなんだ。
 
そのママも仕事でほとんどいないから、わたしたちは毎日、由希奈ん家に集まって遊ぶ。