軽やかな音だ。元気で駆け出すような騒がしさの。 安田さんのような中年男性の足音でも、あの強面のおじさんでもない。彼らならもっと落ち着いた音になる。 それがこの小部屋に、どんどんと近づいてくる。 何なの? 思わず立ち上がると、ドアが勢いよく開いて誰かが飛び込んできた。 「……」 「……」 その誰か──私と同じくらいの男の子は、目も口もまあるくして私を見ている。 私も似たような表情をしているんだろうな、となんとなく思った。