階段はすぐに見つかって、昇れば大きな時計の近くにある部屋も迷わず見つけられた。
ドアを開けると、私の鞄が部屋の隅っこに置かれているのが見えた。視線をそこから奥へと移す。
大きめの、上下に開けるタイプの窓。
人が一人寝られるくらいのシンプルなベッド。
年季の入った木製の勉強机。
ここが、私の部屋。
胸がドキドキするのが自分でもわかる。たった一晩だけとはいえ、自分だけの部屋があるってこんなにも嬉しいことなんだ。
興奮で暑くなって、窓を開けようと近づいて枠に手をかけた。古めかしい銀色の鍵を開けて、下の窓を持ち上げる。
とたんに、緑の生々しい匂いが部屋に駆け込んできた。爽やかな空気を胸いっぱいに吸うと、視界の端に紙のようなものがかすった。
何だろう?
そう思って紙があったと思ったところを探す。風が入ってきたから舞い上がってしまったのかもしれない。
ベッドの足側に落ちている、白い紙──手紙を拾う。前の人のだったら房宗さんに届けておかないと。
私は手紙を裏返して、そのまま息を詰めた。
宛先には、安田さんへ、と書かれていた。



