星⭐︎に願いを

***

 あっという間に一学期は終わって、夏休みに入り。
 宿題なんかやらないでダラダラしていたら新学期になった。

(あー、実りのない夏休みだった)

 やる気がなさすぎて、二学期初日だというのに、おもいっきり遅刻した。
 諦めてダラダラとクラスに入ると、久保田がオレの方へ飛んできた。

「青山! お前知ってたか?」
「唐突になんだよ」
「佐々木、転校すんだって」
「え?」

 彼女の席は綺麗(きれい)に何も無くなっていて、今日の1時間目に最後の挨拶もすませたところらしい。

(なにそれ、いきなりすぎないか)

 胸の中にモヤっとしたいら立ちみたいなものがわいたけど、意味がわからない。

 オレはあんまり感情は動かないタイプだ。
 テンションでいえば、めちゃくちゃ上がることもないし、泣くほど下がることもない。

 なのに今、オレはイラッとして、むかっとして、そんで……泣きたい気分だった。

(……オレ、佐々木が好きだったのか?)

 王子様なんて無理だと思った。
 スポーツは普通だし、成績も普通よりちょっといいくらいだ。
 金持ちでもないし、もちろんイケメンでもない。

 だから、最初から無理なことは諦めようと思った。
 可能性がないのに頑張って、負けたら恥ずかしいって思ったんだ。

 佐々木が笑顔でオレを好きだって言ってくれる可能性なんかないって思ったんだ。

(オレ、すげーカッコ悪いじゃん)

 七夕祭りの日、たぶん一目惚れってやつをしたんだ。
 それ以来ぼーっとしてたのも、久保田の言うとおりだった。

「あいつ、まだ学校にいんの?」

 やっとそれだけ言うと、久保田はうんと頷いた。

「職員室に寄ってから帰るって言ってたから、まだいると思う」
「わかった」

 オレは教室を出て猛ダッシュで職員室に向かった。

 負けてもいい、恥をかいてもいい。
 二度と会えないっていうのだけは嫌だ。そう思ったんだ。

「くそっ」

(間に合ってくれ!)

「青山……くん?」

 昇降口に降りていた佐々木が、走るオレに声をかけた。
 足を止めて振り返ると、驚いた様子で彼女がオレを見ている。

「教室、反対の方だよ?」
「……佐々木」

 オレは息を整える暇もなく、佐々木が立っている場所までゆっくり歩いた。

 そして――