星⭐︎に願いを

 たくさんの短冊がつるされている笹の前で、チラッと見えた佐々木の願い。

『王子様とつきあえますように』

 1ヶ月も前から願っていた彼女の望み。
 それは、王子様だった。

(え? 王子様ってディズニーとかに出てくるあれか? プリンセスの相手役の?)

 恋とかそういうのは想像したこともないから、王子っていう願いの意味がわからない。

 こういう時はインターネットだ。
 調べてみると、王子というのは頭が良かったり、イケメンだったり、金持ちだったり。
 要するに、女子が憧れるような存在の男をいうみたいだ。

(そんなやつになれるわけないだろ!)

 なにも書かれていない短冊をテキトーにつるして、オレは心で叫んでいた。

***

 七夕祭り以来、佐々木が気になる。
 フルネームは佐々木茉莉花(ささきまりか)というのだと初めて知った。

(可愛い名前だな)

 なにごとにも無関心なオレが、女子の名前を知っただけでボケッとしている。
 ありえない。

 毎日、彼女がなにをしてるんだろうって考えたりしている。
 ありえない。

「恋でもしてんのかよ」

 久保田から唐突に言われた言葉に、目が出そうなほど驚いた。

「はあ? なんで」
「だってお前、最近ため息ばっかだし。なに話しててもテキトーな返事だし」
「ちょっとぼうっとしただけだろ。気のせい、気のせい」
「ぼうっとしてる時に佐々木を見てるのも気のせいか?」
「っ、ゴホ!」

飲みかけの麦茶を吹き出した。
久保田はニヤけながらオレの頭を叩いた。

「告白しちまえ」
「うるせー!」

オレはそう叫んで、もう佐々木を見てボーッとするのはやめようと心に誓った。