願いなんかない。
つまらない毎日がくり返されるだけ。
あの日まで、そう思っていた。
「最後までいれば、めっちゃデカい花火上がるらしいぞ」
オレを誘いにきたクラスメイトの久保田は、うれしそうに夜空を見上げている。
「花火、ねえ」
(久保田には悪いけど、オレ、花火見て感動したことないんだよなあ)
ついでに今日の目的である“七夕の短冊をつるす“というのも興味がない。
仲良くしてくれているクラスメイトに、こんな本音は言えない。
でも、祭りに参加してウキウキしたことなんかないし。
(残念だけどオレはこういうやつなんだ)
サンタだって信じたことがないし、流れ星に願いをかけたってかなうわけないと思ってる。
現実を見ていかないと。
夢なんてみるものじゃない。
「あれ? あそこの三人組、B組の女子じゃね?」
「ん?」
言われて目を向けると、そこには確かに見覚えのある女子がいた。
田舎の中学だから、B組っていったってふたクラスのうちのひとってだけだ。
なのに、いまだにクラスメイトの名前と顔がいっちしない。
「高野と、相川と、もうひとり……誰?」
「……多分、佐々木だ」
多分ってつけてしまうほど、佐々木の容姿はいつもと違っていた。
浴衣を着ているからっていうのもあるだろうけど、なんていうか……おとなっぽかった。
「あれ、酒井くんたちもきたの?」
一番に気がついて声をかけてきたのは相川だ。
背も高いし日本人ぽくないからすごく覚えやすい。
「まあな。お前らも願いごとしにきたのか?」
「そうなの。せっかくだから浴衣も着たいねって言って」
そう答えたのは、いつも相川の隣にいる高野だ。
このふたりは、いろんな意味で目立つから覚えていた。
でも、佐々木のことはクラスで会っても他のみんなと区別がつかない。
言われてみれば、そういう子がいたかな……ってくらいだ。
(なのに、なんで今日だけやけに目立って見える?)
不思議に思いながら短冊用の笹が掲げられている場所にみんなで向かった。
相川と高野は久保田と楽しげに話していて、なぜかオレは佐々木と並んで歩くハメになっていた。
(うわ、なに話せばいいんだよ?)
突然焦りはじめたオレの横で、佐々木はのんびりと空を見たり祭りの様子を見たりしている。
(意識してるのオレだけ???)
いいかげん沈黙がキツくなってきた頃、佐々木がオレを見上げた。
「青山くんはどんな願いを書いたの?」
「え、オレ? 願い?」
「短冊持ってきたんでしょ?」
「……ああ、うん」
ポケットの中でくしゃくしゃになってる短冊を確かめ、そこにはなにも書かれてないことを思い出す。
「お前は?」
「私は、もう1ヶ月も前から書いて用意してあったんだ」
大事そうにファイルに閉じてある短冊をチラッと見せて、佐々木は微笑んだ。
その笑顔がなんだか妙にまぶしくて、オレは目をぱちぱちさせた。
(佐々木ってこんなに可愛かったか?)
「てか、1ヶ月も前から書いてたって聞こえたけど」
「うん」
ビックリしすぎてスルーするところだった。
「叶うといいなと思って、お月様にもお願いしてたんだ」
(そんなに真剣に叶えたいことってなんだよ)
聞いてみたかったけど、なんか照れくさかった。
つまらない毎日がくり返されるだけ。
あの日まで、そう思っていた。
「最後までいれば、めっちゃデカい花火上がるらしいぞ」
オレを誘いにきたクラスメイトの久保田は、うれしそうに夜空を見上げている。
「花火、ねえ」
(久保田には悪いけど、オレ、花火見て感動したことないんだよなあ)
ついでに今日の目的である“七夕の短冊をつるす“というのも興味がない。
仲良くしてくれているクラスメイトに、こんな本音は言えない。
でも、祭りに参加してウキウキしたことなんかないし。
(残念だけどオレはこういうやつなんだ)
サンタだって信じたことがないし、流れ星に願いをかけたってかなうわけないと思ってる。
現実を見ていかないと。
夢なんてみるものじゃない。
「あれ? あそこの三人組、B組の女子じゃね?」
「ん?」
言われて目を向けると、そこには確かに見覚えのある女子がいた。
田舎の中学だから、B組っていったってふたクラスのうちのひとってだけだ。
なのに、いまだにクラスメイトの名前と顔がいっちしない。
「高野と、相川と、もうひとり……誰?」
「……多分、佐々木だ」
多分ってつけてしまうほど、佐々木の容姿はいつもと違っていた。
浴衣を着ているからっていうのもあるだろうけど、なんていうか……おとなっぽかった。
「あれ、酒井くんたちもきたの?」
一番に気がついて声をかけてきたのは相川だ。
背も高いし日本人ぽくないからすごく覚えやすい。
「まあな。お前らも願いごとしにきたのか?」
「そうなの。せっかくだから浴衣も着たいねって言って」
そう答えたのは、いつも相川の隣にいる高野だ。
このふたりは、いろんな意味で目立つから覚えていた。
でも、佐々木のことはクラスで会っても他のみんなと区別がつかない。
言われてみれば、そういう子がいたかな……ってくらいだ。
(なのに、なんで今日だけやけに目立って見える?)
不思議に思いながら短冊用の笹が掲げられている場所にみんなで向かった。
相川と高野は久保田と楽しげに話していて、なぜかオレは佐々木と並んで歩くハメになっていた。
(うわ、なに話せばいいんだよ?)
突然焦りはじめたオレの横で、佐々木はのんびりと空を見たり祭りの様子を見たりしている。
(意識してるのオレだけ???)
いいかげん沈黙がキツくなってきた頃、佐々木がオレを見上げた。
「青山くんはどんな願いを書いたの?」
「え、オレ? 願い?」
「短冊持ってきたんでしょ?」
「……ああ、うん」
ポケットの中でくしゃくしゃになってる短冊を確かめ、そこにはなにも書かれてないことを思い出す。
「お前は?」
「私は、もう1ヶ月も前から書いて用意してあったんだ」
大事そうにファイルに閉じてある短冊をチラッと見せて、佐々木は微笑んだ。
その笑顔がなんだか妙にまぶしくて、オレは目をぱちぱちさせた。
(佐々木ってこんなに可愛かったか?)
「てか、1ヶ月も前から書いてたって聞こえたけど」
「うん」
ビックリしすぎてスルーするところだった。
「叶うといいなと思って、お月様にもお願いしてたんだ」
(そんなに真剣に叶えたいことってなんだよ)
聞いてみたかったけど、なんか照れくさかった。
