探し物は一向に見つからなかった。



佐々木琴葉はどんよりとした押し入れの中を無我夢中で漁っている。山積みになった本から梅雨の匂いを感じた。

こもった匂いにむせかえるようにして仰向けになり、一息つく。すると途端に何を探していたのか思い出せなくなった。



「何探してたんだっけ」



窓の外から入る鈍い光を避けるようにして背を向ける。
唸るように身じろぎながら目を瞑ったが、下の方でぐうぐうと何かが訴えてきて、もう一度目を開いた。
 

「お腹すいたなあ」


お腹の音を抑えるようにゆっくりと立ち上がり、テーブルの上に無造作に置かれた鍵を手に取った。



履き慣れたパンプスを裸足のまま履き、新品のビニール傘を手に琴葉は雨の中へ飛び出した。