話終わったあとちらりと横の心陽を見ると、目を伏せて、考え込んだ表情をしていた。

全てを話したことを少しだけ後悔した。


でも、不思議だった。

自分のことをこんなに話すなんて、普段の俺にはないことだ。

ただ、若干の躊躇いがあったのだろう。

その証拠に、話している間一度も心陽を見ることができなかった。


「俺さ、昨年もこの世に戻ってきたんだけど、何も出来なかった。1ヶ月しか一緒じゃないクラスメイトのことなんて1年もすれば忘れられてて、梅雨の間ひとりで過ごした。その時に思ったんだ。どうせ死ぬならクラゲみたいに死にたかったって。」


心陽はそれを聞いてクラゲを見上げた。


「クラゲって体の90%以上が水分なんだ。だから、死ぬと水に溶けて消える。孤独な梅雨を過ごすくらいなら、いっそクラゲみたいに消えたい。」


俺はこの話をしてから初めて心陽と目を合わせた。


「でも、今年は心陽に会えた。」


梅雨が来てこの世に戻ってきたとき、今年も孤独な梅雨を過ごすのだと憂鬱に思っていた。

そんな時、駅で心陽に出会った。

一目見てすぐに分かった。

あのときの女の子だって。

だから、声をかけた。

朝の10分だけでも話せて嬉しかった。

それと同時にどんどん心陽に惹かれている気がしていた。

それが今日、確信に変わった。



「心陽、好きだよ」