「おはよー!」

「おう!こっちこっち!」


5分前にもなるとクラスメイトたちが続々と集合場所へやってきた。

最終的な集合場所はこの駅から15分ほどの乗り換え駅だが、最寄りが同じクラスメイトが多いので、半分くらいはこの駅で集まる。

あいにくの雨だが、行くのが室内テーマパークで雨が影響しないこともあり、みんなテンションが高かった。

かく言う俺も周りのテンションに感化されて、クラスメイトの会話に笑みを浮かべる程にはこの状況を楽しんでいた。

さっきのことも相まってか、これから行くテーマパークが楽しみだとまで思った。



実際、楽しかった。

友達とテーマパークに行くなんてあまりない事だったから、柄にもなく楽しんだ。

どうしてあんなに気が引けていたんだろうと思うくらい、クラスメイトは良い奴ばかりで、口数の多くない俺を自然と輪に入れてくれた。

このクラスで良かったって思った。



でも、帰る途中、悲劇は起きた。



それは、解散したあと、同じ路線の奴らとホームで電車を待っていたときだった。

目の前の点字ブロックを白状を持った人が歩いていた。

危ない、と思った。

今はちょうど帰宅ラッシュの時間。

たくさんの人がホームを行き交っている。

『まもなく1番線に電車が参ります。危ないですので黄色の点字ブロックまでお下がりください。』

なんとなくその人を目で追っていると、アナウンスが流れた。

その直後、大きなカバンを持った男性がその人にぶつかった。

その人はバランスを崩し、点字ブロックを見失ってしまった。

立っているのはホームのギリギリ。

考えるより先に足が動いていた。

走って駆け寄り、その人をホームの中へ引っ張った。

危機を逃れられたと思ったのも束の間、今度は俺がバランスを崩した。

気づいた時には線路に向かって体を浮かせていた。



目の前に迫る電車。

大きく鳴り響くブレーキ音。

どこからか聞こえる悲鳴。

俺の名前を呼ぶクラスメイトの声。



目の前が暗くなる瞬間、咄嗟に頭に思い浮かべたのは、今朝見た彼女だった。