君のスガタ

 私は前にも聞いた質問を再度投げかける。

「…前にも言ったと思うけど、気になるんだよ」

 松永先輩は景色を眺めたまま、私に低い声で単調に言い放つ。

「…気になるってなんですか? 私のことはただの後輩って意味合いですよね」

 毎回、気になるとだけ言われて、私はモヤモヤしていた。

 松永先輩は私の問いかけに景色から私の方に目を向けた。表情を変えずに。

 本当にただ質問に答えるかのように。

「…ただの後輩ではないよ。俺にとってはキラキラした綿菓子のような存在。今はそれだけしか言えない」

 松永先輩は目を下に向けてから私を見て、言う。

「分かりました。それだけで十分です。では」

 私は松永先輩の目を見ずに、去っていた。

 その姿に松永先輩は去る私のことを遠目で見ているだけで追ってこなかった。

      *
「慶」

 柚が去った後、すぐ斗真が来た。

「斗真か」

 俺は少し後ろを振り返っただけだが、顔を見なくても分かる。

「その様子だと、柚ちゃんに言わなかったのか。本当お前好きなんだろう。柚ちゃんが学校入って来た時からずっと。僕は分かってたんだよ、ずっと。慶は認めたくないだろうけど」