君のスガタ

 私は出ようか迷っていたが、三回目の通知音が鳴ったら、出た。

「あの…どなたでしょうか?」

 私は相手の方を窺うように聞いた。

「柚!」

 その声は、松永先輩。

「松永先輩!」

 私は電話の主に驚いた。

「なんで私のインスタ知って」

「検索しまっくて、ようやくたどり着いたんだ。名前、本名だからわかりやすかったし。
それより、どこにいるんだよ」

 松永先輩ははぁはぁと息切れをしているのか電話越しでも走っているのが伝わってきた。

 走るまで私になんの用事があるの?

 私のインスタまで調べて、私になにか言いたいことでもあるの?

 松永先輩に質問ばかりが思い浮かぶ。

「…今はお化け屋敷の近くにある小さい休憩所にいます」

 私はそう言うと、松永先輩は待っててと私に声を発するとすぐ電話を切った。

「私、ここで待っていて、いいんだよね」

 私は独り言を呟いてから、松永先輩を携帯を握りしめて待っていた。

 数分後、待っていると松永先輩が来た。

「待たせた、ゴメン」

 松永先輩は携帯を片手に持ち、小さい休憩所に座っていた私をただ見つめてきた。

「いや…大丈夫ですよ。逆になにかあったんですか」