それはもうシンデレラと王子ではなく、一人の高校生としての言葉にしか私の耳にはそう響いてしまう。
「はいはい。シンデレラ、俺もいますけど。この人がいいんですか」
何故か堺くんまでアドリブで私に言いかえす。
え? 堺君まで、なんでアドリブ。
めぐみの方を見ると、ニヤッと笑って口を出す。
「私もシンデレラよ。王子たちよ、私を選ぶとよい」
めぐみは自信たっぷりにアドリブを繰り出す。
みんな私がセリフが出てこなくて、アドリブをしてくれて、ありがたいけど、着地点はどこにあるのか。
心の中でそんなことを考えながらも、私も言葉を紡ぐ。
「そう。私達のうち、誰を選ぶ?」
私はやけくそになって、王子たちに問う。
台本通りじゃなくていい。もう思うがままにやってやろう。
「シンデレラよ。僕はあなたを選びたい」
最初に声を上げたのはきよしだった。
両膝を床にしゃがみこんで、プロポーズを受ける。
今、私はシンデレラで阿部柚ではない。
本当にプロポーズされた感覚に陥る。
これは、演技。
王子役の菅田きよしの演技であり、菅田きよし本人ではない。
「……っ…私は……あなたを選びたい」

