君のスガタ

「うん」

 めぐみに答えてから、幕が開いた。

「シンデレラ」

「王子」

 シンデレラ役と王子役は台本通り進めて、会場は盛り上がっていた。

 順調に行っていたが、私は動作や言葉を頭に入っていたはずが、言葉も行動も何もできなくなった。

 それは、お客様席に松永先輩がいたからだというのも言い訳に過ぎない。

 舞台で立ち止まっていた。

 そんな時、きよしがアドリブで言い放つ。

「あー、シンデレラ。僕はなんでこんなに好きなのだろうか」

 きよしは私と目を合わせて、セリフを言えと訴えていた。その時、セリフは単語一つ一つ思い出して、声を放つ。

「ああ、私は王子のことを好きなんだと思います。王子は私のこと……」

 そう言葉を繰り返してると、きよしは目を丸くした。

 どうした? 目を見開いて。

 シンデレラとして聞いてるのに、きよしの素が垣間見えた。

「…シンデレラ、あなたは僕のことを……」

 王子は澄んだ目でシンデレラを見つめる。真っ直ぐにこの人がいいと言っているように聞こえた。

 聞こえていないのに態度や言葉で聞こえてきた。