君のスガタ

 斗真先輩は私の隣にいる松永慶先輩を見て、そう言った。

 言った傍で私は松永慶先輩の方に振り返ると、目を瞑って寝ていた。

「起きてんでしょ!!」

 私はまだ絡めた右小指をそのままに声を荒げた。

「柚ちゃん、本当どうしたの?」

 斗真先輩は首を傾げて、私に聞いてきた。

「いえ……なにも」

 眉を上げて、今も声を出して言いたかったが、我慢した。

 斗真先輩たちに言っても無駄だと思ったから。

「…離してください」

 私は松永慶先輩の隣に座って、目で訴えた。

 それでも、松永慶先輩は右小指を離さなかった。

 なんで離さないの?

 そんなことをして、私を試そうとしているのか。

「松永慶先輩。みんなもいるんですから」

 松永慶先輩の顔を覗くように見ると、片目だけを開けていた。

「……みんな見てない。だったら、終わるまでこうしてよう」

 片目を閉じてから、また寝始めた。

 こんなのどう見たって好き同士がやること。

 お互い、まだ知れてないのに……

「ちょっと…松永慶先輩!」

 松永慶先輩は耳元の近くで小さめな声をして、言う。

 それでも松永慶先輩は無視してイヤホンを両耳にはめて、何も言ってこない。