君のスガタ

 それでも、私は気にしない。

 態度が変わろうがその人自身のほんの一部しかない。

 本質を見ないと、その人が分からないから。

「……いや……別に…」

 松永慶先輩は目を丸くして、両耳からイヤホンを取り出して、私をずっと見てきた。

「なんですか」

「……いや……意外だなと思って」

「え? 私がそんなこと言ったことですか」

「そう。態度が変わるからって気にしないこと」

「ああ」

 私は納得するかのように返事をした。

「……そっか。そういう風に言うやつもいるんだと思ってな」

 松永慶先輩は下に目を落として、なにか考え込んでいた。

「……えーと、どうしました」

 急に下を向いたので、私は戸惑った。

「……なんでもないよ」

 松永慶先輩は顔を上げて、何故か笑みを浮かべていた。

いつもより自然な笑顔で。

 なぜか晴々した表情になっていた。

「松永慶先輩」

 私は名前を呼んで、笑っている松永慶先輩を見た。

 笑った姿は何度も見ているはずなのに、目が離せないほど輝いていた。

目尻に皺をよせて、安心しきったように笑っていたんだ。

「…なに?」

「いや…なにも」